格差と地政学

ジェフェリーサックスの「貧困の終焉」を読み返しています。数ヶ月前に買ってさらっと読んだままにしてしまっていたので、ペンを持ち線を引きながら精読。のうのうと暮らす私たち誰もが一読の価値がある素晴らしい本です。読み進める途中、なぜ先進国と途上国間で経済格差がこうも激しいのか?という章で、なんとなくおもしろいことを思いついたので書いてみる。

なぜ先進国と途上国間で経済格差がこうも激しいのか?

例えば日本と最貧国スーダンGDP比率は購買力平価で40倍(wikipediaの数値で計算)。国家間格差の理由?そんなものは愚かな西欧諸国の植民地主義の結果でしょ!と言いたくなるところですが、

この説明は世界総生産が常に一定であれば理にかなっていて、豊かな地域の増加分と貧しい地域の減少分がほぼ同じになるだろう。ところが現実は大違い。世界総生産はほぼ五十倍になっているのだ。(中略)—むしろ世界総所得の全体的な増加である。 p.73

としっかり否定された。確かに。世界経済の発展は決してゼロサムゲームでは無いことを説いています。では何だったのかというと、科学技術の発展。産業革命ですね。で、ここが肝。なぜ産業革命はイギリスが発端だったのか?中国でも中東でも、それこそアフリカでも良かったはずです。産業革命以前に突出して豊かだったのは、インダス文明とか、マヤ文明とか、そういうところじゃない?イギリスがなぜ発端になったのか、経済史学者の中でも意見が割れてるところらしいが、ある程度合意に至っているポイントがいくつかあるらしい。

1,封建制度崩壊による社会制度のユルさ=政治的な自由の確立
2,人々のアントレプレナーシップ=国民の力が強く私有財産が守られる。リスクテイク。
3,アイザックニュートンに代表される、欧州科学の中心的存在
4,島国であること、肥沃な土壌、交通河川などの地理的利点。
5,君主制の維持による侵略リスクの低さ(これがよくわからない)
6,石炭(エネルギー燃料)の多さ。

要するに、社会的にも政治的にも地理的にも好条件が重なったから。イギリスは運が良かったというのが見解のうちだそうな。このうち政治的な要素は置いておいて、ジェフェリーは地理的な要因の部分で著者は日本も引き合いに出します。

島国であることが、かなりの助けになった。同じく島国の日本が何度もアジア大陸からの攻撃を受けながら、侵略を免れたのとよく似ている。それどころか、およそ1世紀の遅れで、日本はユーラシア大陸の東の端で、アジアの近代経済成長を促すリーダーとしてイギリスと同じような役割を果たすことになった。

フビライハンが攻めてきた弘安の役とか思い出しますね。イギリスと日本、大陸を目の前に構えながら颯爽と発展を遂げる姿は確かに似ている。そういえば似たようなポジションにあたる国って無かったっけってふと思いついたのが、マダガスカル。これが言いたかった。今まで前置き。なんか長くなってしまったので続きはまた今度。。