就活前線で今起こっていることと、それに対して僕達がやらなければいけないこと。

この気まぐれに書いているブログを読んでくれているのは基本的に僕の周りの同年代の友人で、就職活動前後か、働いて1,2年の人がほとんどです。彼らを対象に、現実を受け止めて、大変だけど頑張ろーという主旨のことを書きます。

世界で何が起こっているのか

大卒就職内定率が70%を切ったとか40%を切ったとかいうニュースが、最近新聞に掲載されます。地方大学生の仕事が決まらないドキュメンタリーや合同説明会に何千人も参加したニュースとか、就職前線は阿鼻驚嘆ですが、これは、少し目線を広く取って考えると、仕方ない出来事だと思います。例えて言うと、拳銃しか持たずに戦場真っ只中に放りこまれて、みんなで安全地帯を求めてオロオロしているような状況が合っていると思います。その場所でさえ、どこからミサイルが飛んでくるかなんてわからないのに。視野を日本の就活という小さな視点から、世界の構造変化という大きな視点に移してみると、その理由がわかりやすくなると思います。

学生がしのぎを削って入社しようとするあらゆる企業は、国内外の別の企業との競争の中で戦っています。日夜戦略を立て、同業他社よりもより良い商品を開発したり、コストを圧縮して値段を下げたり、できるだけ企業に貢献してくれそうな優秀な人材を必死で探していると思います。冷戦が終わってからは、元共産諸国の莫大な労働人口が資本市場に流れこんできて、先進国の感覚からすると安めの賃金でも喜んで働いてくれる、圧倒的に優秀な人がどんどん生まれ育ち、教育を受けた後同じように就活をし、社会に出ていきます。

世界の企業が必死なのと同じように、世界の多くの学生はできるだけ自分が居心地いいと思うような企業や組織に入るため、程度の差はあれ、図書館で深夜まで勉強し議論し、山のような課題やその他活動をこなしながら、他の学生が持っていないような知識や経験を積んだりして頑張ります。就職活動をする時点で、企業が自分の仲間に加えたいと思うレベルに達していればその企業は受け入れるし、そうで無ければ別の企業が採用することになると思います。この需要と供給のマッチングをするのが大学など高等教育機関に行く役目の一つであって、多くの優秀層はこの機会を上手く利用します。

悲しいけど転換期

日本は焼け野原だった状態から死に物狂いで頑張ってくれた先代の方々のお陰で、経済がとても強かったので、たまたまその後に生まれた20年間くらいの世代は、この競争に直接参加することなく過ごせていました。お受験エリートになっていい大学に入って、有名な大企業に入っておけば、年功序列であとは何も考えなくても幸せな家庭を築くことが可能でした。僕らの親の世代くらいまでは。

しかし、この日本ルールがもう限界に来ているのは周知の通りです。時間が経つに連れて新興国からも優良企業が沢山生まれ、国際競争は激化し、日本企業は優位なポジションを既に失いました。外国の優良企業が凌ぎを削る国内外の市場で生き残るために、過去の習慣を放棄し、なりふり構わず欲しい人材を探し始めました。このような世界の中で起こっている、企業が求める人材と、就活時点の学生の能力の需給ミスマッチが、現在の暗い就活前線の正体の1つです。

昨年のパナソニックユニクロの発表などを皮切りに、突然採用する学生の9割を海外の学生にするなどという話が現実になってきているのです。大学の先輩と同じようにのんびりと大学生活を過ごして、適当に就活始めて何とかする予定だった大学生は、突然かつ静かにそっぽを向かれてしまいました。

リクルーターと銀座でご飯を食べたら内定が出たバブル世代と、全く同じ事をして過ごしているのに酷いじゃないかと思うかも知れませんが、ビジネスで困らない程度の日本語が喋れて、英語と母国語が完璧でしっかり勉強してきた中国人やインド人と、テニサーや合コンに大学生活を捧げ、特に何も目立った能力も持たない日本人、あなたが採用担当者だったらどちらを採りますか?という話です。昔はそんな人少なかったけど、今はたくさんいる。ただそれだけのこと。

どれだけ弱い立場にいるか

だから、就活前線は暗いし、これから良くなることは決してありません。僕たちは農業と比較にならないくらいの幼稚産業品でしかないことをしっかりまず把握するべきだと思います。その上で、自分の生活を守り人生を楽しむために、自分は何をするべきか。

残された道は、世界の学生と戦えるレベルにまで、必要な能力を自分たちで上げるしか無いというのが僕の個人的な答えです。誰も導いてはくれないから。走る予定だったコースが実は穴だらけで、下手したら途中で崩れているかもしれないなら、高い壁を乗り越えて別のレーンに行ったり、荒廃した道を自分で開拓して行ったり、どこにでも行ける翼を手に入れるしか無い。何処へ行っても安全地帯というのは無いのだろうけど、自分にフィットしていたり、マシなところはたくさんあるんじゃないでしょうか。

よくわからないまま大変な状況に放り込まれて、これから本当につらいこともあるかもしれないけど、幸いなことに、人の殺し合いが平気で起こっているような国と違って、日本は豊かで、あらゆるリソースは十分に揃ってるので、本気出せばなんとかなります。あとはどれだけ自分の人生に必死になれるかじゃないでしょうか。僕は好き嫌いとか激しいタイプなので、嫌いなことを避けて好きなことをするためになら、結構頑張ります。

完璧な人なんて居ない

ちなみに、上述の中国人やインド人はもうプロフィール見ただけで圧倒されてしまいそうになりますが、所詮は同じ歳の学生。実は弱点も結構有ります。

例えば、近隣アジアの大学生はとても勉強ができますが、その正体はお受験エリートを更にエリートにしたような程度のものです。つまり、記憶力や忍耐力に圧倒的に長けていますが、柔軟な考え方や強い熱情を持っている人にはあまり会いません。親からのプレッシャーとか、いいGPA(成績)を取って、収入の良い所に就職したいからという程の動機しか、彼らの一日25時間のハードウォークを支えていません。就職活動の時期が近づくにつれ、日本の学生と同じように、道を失って迷いながらも、とりあえず無難な道を歩みます。ただそれでも圧倒的にハードウォーカーで優秀なので優良企業に好かれ、オファーを掻っ攫っていきます。

この風潮はアイビーリーグでもあまり変わらない気がします。米国トップ高等教育の質はとても高いと思いますが、かといってそれは人生の方向性を指し示してくれる類のもとは違います。極少数を除いて、結局彼らにとっては無難なお決まりコースへ行く人が多いと、友達を見ていて思います。

日本の学生はハードスキルはとても弱いですが、下手にメインストリームに乗れなくなっていくまでの間、自分で自分の道を必死で探し、適応するだけの大国の余裕があります。日本の学生の強みはここにあると思うのですが、如何でしょうか。

何故こうなったか?

最後に、こうなったのは誰の責任でしょうか。今回は就活を目の前にした学生の立場から書いているので、世界の学生との比較を中心に述べていますが、他にも例えば、日本の高度経済成長を支えた社会システムに少子高齢化がじわじわ襲いかかる中、下手に豊かな分、固定化した国民の生活スタイルを変更出来なかった惰性があると思います。いずれにせよ、それらを担ったのは政治家か官僚かもしれないし、マスメディアや大企業なのかもしれません。団塊の世代やロスジェネと言ってもいいのかもしれません。ただ、名指しで人を攻めるのは簡単ですが、あんまりかっこ良くないし無意味なので僕は賛成しません。

何より僕は、上の世代の方々もすごく悩んでいることも知りました。ついこの間、某大手マスメディアの管理職の方とお話する機会がありました。自分たちの歩んできた道程と、直面している大きな変化の狭間で、何かモヤモヤした気持ちを抱きながらも、行動を起こす術は持てない葛藤を言葉の隙間から痛いほど感じました。自分たちの状況をも知ってほしいけど、しかしそれは適切ではないことも理解している。自分たちでスタンダードを作ってきて、しかしその椅子は自分たちで埋めてしまっているという背徳感を抱きながら、自分からはどうすることも出来ないジレンマ。でもこれは正直わかる。誰だって自分や自分の家族が可愛いし、その息子や娘が僕らだったりする。

でもこの話を聞いてから、こういうことに絶望していた僕は少し気持ちが楽になりました。都合のいいところは島国根性、同じような葛藤をあらゆる世代が抱えているようです。起こすべき人が行動を起こせば、上の世代にも喜んで協力してくれる人は実はたくさんいるんじゃないでしょーか。

ということで、僕らの世代は自分の力で生きていこう。がんばろー。